ポートレート撮影において「相互無償」を前提とすることの違和感(2025.3.28改)

お疲れ様です、フリーランスフォトグラファー&写真講師のまちゃるです。

今日はポートレート撮影においてよく見かける「相互無償」について、自分なりの考えを整理してみたいと思います。

「相互無償」とは、お互いに金銭のやり取りをしないという意味ですが、これについて以前から少し違和感を感じることがありました。
今回はその理由を掘り下げつつ、自分のスタンスをお伝えできればと思います。

なお、本記事では「相互無償」に対する批判的な視点も含みますが、決してこの撮影スタイルを全否定するわけではありません。「こういう考え方をする人もいるんだな」くらいの気持ちで読んでいただければ幸いです。

自分の「相互無償」に対する考え方

偉そうなことを言っていますが、実際のところ、僕自身もプライベートな撮影では「相互無償」で撮影することが多いです。(「何を偉そうに書いてんの」とツッコんでください)

たとえば、僕がモデルさんを募集する際には、以下のような条件をお願いしています。

  • 撮影した写真をホームページやSNSで使用する許可をもらう(写真展やフォトコンテストへの出展は別途相談)
  • モデルさんには撮影データを提供し、自由に使用できるようにする
  • 撮影に必要な交通費・入場料・食事代などは僕が負担

この条件に合意してもらえる場合のみ、「相互無償」での撮影をお願いしています。

そもそもプロのフォトグラファーとして仕事をしている僕は、通常なら撮影に対価をいただきます。
一方で、モデルさんもプロ・アマ問わず、自身の時間を使って撮影に参加する以上、本来は報酬が発生するべきだと考えています。

ではなぜ「相互無償」をお願いするのか?それは、お互いの提供する価値がバランスを取る形で「結果的に無償となる」と考えているからです。

「相互無償」は結果として成立するもの

「相互無償」という言葉を見たときに、僕が感じる違和感の一つは、

「最初から無償であることが前提になっている」

という点です。

本来、「相互無償」とは、お互いの提供する価値が等しいと双方が納得した結果として成立するものです。

例えば、

  • モデル側の提供価値 = 撮影時間の提供 + 撮影した写真の掲載許可
  • カメラマン側の提供価値 = 高品質な写真の提供 + 必要経費の負担

このバランスが取れたときに、「相互無償」が自然と成立するわけです。

しかし、これを最初から「無償」と決めてしまうと、本来あるべき価値の評価や交渉の機会が失われるのではないでしょうか?

もちろん、ボランティア活動のように「無償でやること自体に価値を見出す」場合もあります。
しかし、ポートレート撮影においては、金銭以外の形であっても何かしらの対価のバランスを意識することが重要だと思います。

「相互無償」がもたらす矛盾

「相互無償」を前提にすると、以下のような問題が生じることがあります。

  1. 本来あるべき評価の機会が失われる
    • カメラマンもモデルも、それぞれのスキルや時間が正しく評価されない
    • 「無償だからまあいいか」とお互いの責任感が薄れ、撮影の質が低下する
  2. 条件が合わない人との出会いを妨げる
    • 本来なら有償でお願いしたいモデルが「相互無償」の条件で断念する
    • 逆に、カメラマンが報酬を支払う意思があれば、より魅力的なモデルとのコラボが可能になる

「相互無償」は悪いことではありません。しかし、それを前提にしてしまうことで、「適切な評価が行われず、結果としてポートレート撮影の可能性を狭めてしまうのではないか?」と僕は考えています。

価値を正しく評価し合うことの大切さ

フリーランスとして仕事をしていると、クライアントからの報酬が想定より高かったとき、承認欲求が満たされることがあります。

「お金で評価されることを喜ぶのは浅はか」と思う方もいるかもしれません。しかし、個人で勝負する身にとって、「お金」は最もシンプルな評価基準の一つです。

ポートレート撮影においても同じことが言えます。

「お互いを正当に評価し、交渉したうえで合意する」

このプロセスこそが最も大切なのではないでしょうか?

単に「無償で」と決めてしまうのではなく、お互いに提供できる価値を考え、その上で「結果的に相互無償が成り立つ」なら問題ありません。

しかし、最初から「無償ありき」で考えてしまうと、本来の価値のやりとりが無視されてしまう可能性があるのです。

まとめ

  • 「相互無償」は、お互いの価値がバランスを取った結果として成立するもの
  • 最初から「無償前提」にしてしまうと、本来あるべき評価の機会が失われる
  • お互いを正当に評価し合うことが、ポートレート撮影の可能性を広げる

ポートレート撮影は、カメラマンとモデルが協力して一緒に作品を作るものです。その関係性が健全であるためには、「相互無償」という言葉を前提にせず、お互いの価値を尊重し合う意識を持つことが大切ではないでしょうか?

この問題には多くの意見がある中で、自分が考えている点をまとめさせていただきました。
少しでも何かの参考になりましたら嬉しいです。

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